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DASとは?物流倉庫の仕分け作業を効率化するデジタルアソートシステムの仕組みと導入メリット

2025.12.19

EC市場の拡大により、物流倉庫では迅速かつ正確な仕分け作業が求められています。従来の紙リストによる仕分けでは、作業者の負担が大きく、ミスも発生しやすいという課題がありました。

こうした課題を解決する手段として注目されているのが「DAS(デジタルアソートシステム)」です。DASは、デジタル表示器を活用して仕分け作業を効率化し、誰でも正確に作業できる環境を実現します。

本記事では、DASの基本的な仕組みから、類似システムとの違い、導入メリット・デメリット、活用事例まで、物流倉庫の効率化を検討する際に必要な情報を体系的に解説します。

DAS(デジタルアソートシステム)とは

DASとは「Digital Assort System」の略称で、デジタルアソートシステムと呼ばれる仕分け作業支援システムのことです。

物流倉庫において、仕分けする商品をハンディターミナルなどでスキャンすると、仕分け先の間口に設置されたデジタル表示器に投入数量が表示される仕組みとなっています。

そのため、DASはトータルピッキング(バッチピッキング)した商品の配送先別仕分けや、入荷した商品を即座に仕分けして出荷する通過型センターの運用に適したシステムです。日配品、惣菜、生鮮品などの荷揃えでも広く活用されています。

DASの基本的な仕組みと特徴

DASの導入効果を最大化するためには、その仕組みと特徴を正しく理解することが重要です。ここでは、DASの基本的な作業フローと主要な構成要素について解説します。

  • 種まき式の仕分け作業
  • デジタル表示器による作業指示
  • ハンディターミナルとの連携

種まき式の仕分け作業

DASは「種まき式」の仕分け作業を支援するシステムです。種まき式とは、複数の出荷先の商品をまとめてピッキングし、その後に各出荷先別に振り分ける方式を指します。

たとえば、30店舗への出荷がある場合、30店舗分の商品を一括でピッキングしてから、各店舗用の間口に商品を投入していきます。この方式により、ピッキング作業の効率が大幅に向上し、倉庫内の移動距離を最小限に抑えることが可能です。

種まき式は、出荷先が多くアイテム数が比較的少ない場合に効果を発揮します。逆に、アイテム数が出荷先数より多い場合は、摘み取り式のDPS(デジタルピッキングシステム)の方が適している場合もあります。

デジタル表示器による作業指示

DASの中核を担うのがデジタル表示器です。各仕分け先の間口に設置された表示器は、ランプの点灯と数量表示によって作業指示をおこないます。

デジタル表示器には複数のタイプがあります。固定式は搬送ラインと一体化しやすく、大規模なセンターでの運用に向いています。無線式は設置場所の柔軟性が高く、レイアウト変更にも対応しやすいのが特徴です。

さらに、表示器の色を活用した運用も可能です。複数の作業者が同時に作業する場合、それぞれの担当色を決めることで、効率的な分担作業を実現できます。表示器によっては最大5色(5人同時作業)に対応しているものもあります。

ハンディターミナルとの連携

DASは、ハンディターミナルと連携して動作します。仕分け対象の商品バーコードをスキャンすると、上位システム(WMSなど)から仕分け情報が送信され、該当する間口の表示器が点灯して数量を表示。

作業者は、ハンディターミナルで商品をスキャンし、点灯した表示器の間口に指示数量を投入した後、表示器のボタンを押して完了を登録します。この一連の流れにより、仕分け実績が自動的に記録され、上位システムに反映されます。

紙のリストを見ながらの作業が不要になるため、作業者は両手を使った効率的な作業が可能です。また、商品知識がなくても作業ができるため、新人でもすぐに戦力化できる点も大きなメリットです。

DASと類似システムの違い

物流倉庫では、DAS以外にもさまざまな仕分け・ピッキング支援システムが活用されています。導入を検討する際には、それぞれの特徴と違いを理解し、自社の業務に最適なシステムを選択することが重要です。

  • DASとDPS(デジタルピッキングシステム)の違い
  • DASとGAS(ゲートアソートシステム)の違い

DASとDPS(デジタルピッキングシステム)の違い

DPS(Digital Picking System)は、ピッキング作業を支援するシステムです。倉庫に保管されている商品の中から必要な数量を取り出す際に、棚の間口に設置されたデジタル表示器が点灯し、ピッキングする数量を知らせます。

DASが「仕分け(種まき式)」に使用されるのに対し、DPSは「ピッキング(摘み取り式)」に使用されます。両者は作業の方向性が逆であり、商品を「投入する」のがDAS、商品を「取り出す」のがDPSと理解するとわかりやすいでしょう。

出荷先よりアイテム数が多い場合はDPS(摘み取り式)が適しており、アイテム数より出荷先が多い場合はDAS(種まき式)が効果的です。自社の出荷形態を見極めた上で、最適なシステムを選択する必要があります。

DASとGAS(ゲートアソートシステム)の違い

GAS(Gate Assort System)は、ゲート式の仕分けシステムです。商品バーコードをスキャンすると、該当する間口のゲートが自動的に開き、デジタル表示器に投入数量が表示されます。

GASの最大の特徴は、1回の投入で1箇所しかゲートが開かない点です。物理的に誤った間口への投入ができないため、仕分けミスをほぼ完全に防止できます。また、仕分けと検品を同時におこなえるため、後工程での検品作業が不要になります。

一方で、DASは複数の間口を同時に表示できるため、大量の仕分けには向いています。GASは誤投入防止に優れていますが、1コンテナごとの投入となるため大規模なピッキングには不向きな面もあります。設置にもDASより広い作業通路幅が必要です。

DASを導入するメリット

DASを導入することで、物流倉庫の仕分け作業においてさまざまなメリットを得ることができます。とくに人手不足が深刻化する物流業界において、DASは効果的な省人化・効率化の手段となります。

  • 作業効率の大幅な向上
  • 省人化による人件費削減
  • 仕分けミスの削減と品質向上
  • 作業の標準化が可能

作業効率の大幅な向上

従来の紙リストによる仕分けでは、作業者がリストを確認しながら商品の投入先を探す必要がありました。DASを導入すると、表示器のランプが点灯した間口に指示数量を投入するだけの単純作業となるため、作業効率が大幅に向上します。

リストを持ち歩く必要がなくなるため、両手を使った効率的な作業が可能になるためです。また、投入先を探す時間が削減され、仕分け作業全体のスピードが向上します。

とくに出荷先が多い現場では、その効果が顕著に表れます。30店舗以上への仕分けをおこなう現場では、行ったり来たりの移動が減り、作業動線の最適化も図れるようになります。

省人化による人件費削減

従来、2人1組(1人がリスト読み上げ、もう1人が仕分け)でおこなっていた作業が、DASの導入により1人で完結できるようになります。リストを読み上げる人員が不要になり、その分の人件費を削減可能です。

それだけでなく、作業効率の向上により、同じ物量を少ない人数で処理できるようになるため、全体的な人件費の削減にもつながります。とくに繁忙期の臨時スタッフ採用を抑制できる点も大きなメリットです。

物流業界では人手不足が深刻化しており、限られた人員で効率的に作業をおこなうことが求められています。DASは省人化を実現しながら、作業品質を維持・向上できる有効な手段といえるでしょう。

仕分けミスの削減と品質向上

紙リストによる仕分け作業では、商品の入れ間違いや数量ミスといったヒューマンエラーが発生しやすい傾向にあります。DASでは、商品バーコードをスキャンし、表示器の指示に従って作業するため、こうしたミスを大幅に削減可能です。

仕分けミスの削減は、誤出荷の防止につながります。誤出荷は顧客からのクレームや返品対応、再出荷のコストなど、さまざまな損失を引き起こすため、その防止は物流品質の向上に直結します。

さらに、計量器付き表示器やゲート付き表示器などのオプションを活用することで、より高精度な仕分けを実現することも可能です。

作業の標準化が可能

DASを導入すると、デジタル表示器の指示に従うだけで作業が完了するため、作業手順が標準化されます。熟練度による作業スピードや品質のばらつきを抑え、誰でも一定水準の作業をおこなえるようになるのがメリットです。

商品知識がなくても作業ができるため、新人やアルバイトでも簡単なレクチャーですぐに作業に入ることができます。教育コストの削減にもつながり、人員の流動性が高い現場でも安定した作業品質を維持できます。

作業の標準化により、正確な作業時間の予測も可能になります。出荷計画の精度が向上し、配送スケジュールの最適化にも貢献できるでしょう。

DASを導入する際のデメリットと課題

DASは多くのメリットをもたらしますが、導入にあたっては考慮すべきデメリットや課題も存在します。導入を検討する際には、これらの点を十分に理解した上で、費用対効果を見極めることが重要です。

  • 初期投資とランニングコスト
  • 既存システムとの連携課題
  • システムトラブル時のリスク
  • 商品配置やブロック構成の複雑化

初期投資とランニングコスト

DASの導入には、デジタル表示器の購入費、設置工事費用、WMSとのシステム連携費用など、相応の初期投資が必要です。倉庫の規模が大きいほど設置する表示器の数も増えるため、導入コストは高くなります。

導入後も、システムの維持費や表示器のメンテナンス費用といったランニングコストが発生します。導入を検討する際には、現在の出荷量や将来の成長見込みを考慮し、投資回収の見通しを立てることが重要です。

ただし、省人化による人件費削減や作業効率向上による処理能力の増加を考慮すると、長期的には十分な投資対効果を得られるケースが多いといえます。

既存システムとの連携課題

DASを効果的に運用するためには、WMS(倉庫管理システム)などの上位システムとのデータ連携が不可欠です。既存システムとの連携に際して、データ形式の変換や通信方式の調整など、技術的な課題が生じる場合があります。

とくに、複数のマテハン機器を組み合わせて運用する場合は、WCS(倉庫制御システム)やWES(倉庫運用管理システム)を介した統合管理が必要になることもあります。

導入前に、既存システムとの連携可否や連携方法について、ベンダーと十分に確認しておくことが重要です。連携実績のあるシステムであれば、導入がスムーズに進む可能性が高まります。

システムトラブル時のリスク

ハンディターミナルやデジタル表示器などのシステムがトラブルで停止すると、仕分け作業全体がストップしてしまうリスクがあります。システムへの依存度が高まるため、トラブル発生時の影響が大きくなる点には注意が必要です。

こうしたリスクに備えて、システムトラブル発生時の代替作業マニュアルを整備しておくことが重要です。紙リストによる手作業での仕分けに切り替えられる体制を維持しておくことで、万が一の際にも出荷を継続できます。

また、定期的なメンテナンスやシステムの冗長化により、トラブル発生リスクを最小限に抑える取り組みも欠かせません。

商品配置やブロック構成の複雑化

DASを導入すると、デジタル表示器を各間口に設置するため、商品のロケーション変更には表示器の設定変更も伴います。紙リストによる仕分けと比較して、柔軟なロケーション変更が難しくなる点はデメリットといえます。

導入前の段階で、商品のロケーション配置を十分に検討し、導入後はできるだけ変更が発生しないような運用設計が求められます。

ただし、無線式の表示器を採用すれば、固定式と比較して柔軟なレイアウト変更が可能になります。物量の変動に応じてオリコンやカゴ車を並べ替えるような運用にも対応できます。

DASが活用されている業界と適用場面

DASは、多様な業界の物流現場で活用されています。とくに、出荷先が多く細かな仕分けが必要な現場で、その効果を発揮しています。ここでは、代表的な活用シーンを紹介します。

  • 小売業・EC事業での活用
  • 食品物流・日配品センターでの活用
  • 製造業・通過型センターでの活用

小売業・EC事業での活用

小売業やEC事業では、多数の店舗や個人顧客への出荷が日々発生します。スーパーやコンビニエンスストアの物流センターでは、各店舗からオーダーされた商品を一括で仕入れ、店舗ごとに効率よく仕分けする作業が必要です。

DASを活用することで、多店舗への仕分け作業を効率化し、出荷リードタイムの短縮を実現できます。とくにコンビニエンスストア向けの物流センターでは、DASの導入が進んでおり、高い稼働実績を持つシステムも存在します。

EC事業においても、トータルピッキング後のオーダー別仕分けにDASが活用されています。多品種小ロットの出荷が多いEC物流では、仕分け精度と効率の両立が求められるため、DASの導入効果は大きいといえるでしょう。

食品物流・日配品センターでの活用

食品物流や日配品センターでは、賞味期限の制約から迅速な仕分けと出荷が求められます。入荷した商品を即座に仕分けして出荷する通過型センターの運用において、DASはとくに威力を発揮します。

日配品、惣菜、生鮮品などの荷揃えでは、短時間で正確な仕分けが必要とされます。DASの導入により、作業効率を向上させながら、鮮度を保った状態での出荷を実現できます。

食品物流では、搬送ラインと一体化しやすい固定式DASと、柔軟度の高い無線式DASを効果的に使い分けることで、庫内作業のさらなる効率化・合理化を追求している事例も見られます。

製造業・通過型センターでの活用

製造業においても、DASは部品や製品の仕分け作業に活用されています。工場内のラインサイドへの部品供給や、完成品の配送先別仕分けなど、さまざまな場面で導入が進んでいます。

通過型センター(クロスドックセンター)では、入荷した商品を在庫として保管せず、すぐに仕分けして出荷する運用がおこなわれます。こうした運用では、仕分け作業のスピードと正確性が物流全体の効率を左右するため、DASの導入効果が高いです。

また、お弁当やお惣菜などの食品製造業では、出来上がった商品から順次仕分けをおこなうことで、スピーディーな出荷業務を実現しているケースもあります。

DAS導入時の選定ポイントと注意点

DASの導入を成功させるためには、自社の業務特性に合ったシステムを選定し、適切な導入計画を立てることが重要です。ここでは、選定時に検討すべきポイントと注意点を解説します。

  • 既存システム(WMS等)との連携確認
  • 表示器のタイプ選定(固定式・無線式・ゲート式)
  • 操作性と作業者への配慮
  • 耐用年数とメンテナンス体制

既存システム(WMS等)との連携確認

DASを導入する際には、既存のWMS(倉庫管理システム)やその他の基幹システムとの連携可否を事前に確認することが重要です。連携がスムーズにおこなえるかどうかが、導入後の運用効率に大きく影響します。

連携実績のあるWMSとDASの組み合わせを選択すれば、導入期間の短縮やトラブルリスクの軽減が期待できます。導入検討時には、ベンダーに過去の連携実績を確認しましょう。

また、将来的なシステム拡張や他のマテハン機器との連携も視野に入れ、拡張性の高いシステムを選定することも重要です。

表示器のタイプ選定(固定式・無線式・ゲート式)

デジタル表示器には、固定式、無線式、ゲート式などのタイプがあり、それぞれ特徴が異なります。固定式は大規模なセンターでの搬送ラインとの一体運用に向いており、安定した動作が期待できます。

無線式は設置場所の自由度が高く、レイアウト変更への柔軟な対応が可能です。限られたスペースでも導入しやすく、物量の変動に応じた運用調整もしやすいメリットがあります。

ゲート式は誤投入防止に優れており、高精度な仕分けが求められる現場に適しています。自社の業務特性や現場環境に合わせて、最適なタイプを選定しましょう。

操作性と作業者への配慮

DASの導入効果を最大化するためには、作業者にとって使いやすいシステムを選定することが重要です。表示器の視認性、ボタンの押しやすさ、ハンディターミナルの操作性など、現場目線での評価をおこないましょう。

導入時には、作業者への十分な教育と、操作マニュアルの整備が必要です。新しいシステムへの移行には一定の習熟期間が必要なため、段階的な導入や並行運用期間の設定も検討すべきです。

また、作業者からのフィードバックを収集し、運用改善に活かす仕組みを作ることで、継続的な効率向上を図ることができます。

耐用年数とメンテナンス体制

DASなどのマテハン設備の法定耐用年数は、減価償却資産の「機械及び装置」に該当し、一般的に8〜12年程度とされています。ただし、設備の種類や業種によって異なる場合があるため、導入時に確認が必要です。

法定耐用年数は税務上の数値であり、実際の使用可能期間とは異なります。定期的なメンテナンスを実施することで、法定耐用年数を超えて長期間使用できるケースも多くあります。

導入時には、ベンダーのメンテナンス体制や保守サービスの内容も確認しておきましょう。迅速な故障対応や定期点検の実施により、システムの安定稼働を維持できます。

まとめ

DAS(デジタルアソートシステム)は、物流倉庫における仕分け作業を効率化する有効なソリューションです。デジタル表示器の指示に従って商品を投入するだけの単純作業となるため、作業効率の向上、省人化、仕分けミスの削減、作業の標準化といった多くのメリットを享受できます。

一方で、初期投資やシステム連携、トラブル時のリスクなど、導入にあたって検討すべき課題も存在します。DPS(デジタルピッキングシステム)やGAS(ゲートアソートシステム)など類似システムとの違いを理解し、自社の業務特性に最適なシステムを選定することが重要です。

EC市場の拡大や物流業界の人手不足が進む中、DASは物流効率化の有力な手段として注目されています。本記事で紹介した情報を参考に、自社の物流改善に向けたDAS導入をご検討ください。

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